愛なき世界

〜〜〜真の壁打ち、どなたもアクセスしていないであろう
(度々いうが、アクセス解析見る方法も忘れた)状態そして
発行からだいぶん経っているので大丈夫と思うけど念のため、
三浦しをんの『愛なき世界』のネタバレをもりもり含みます〜〜〜


藤丸視点でもすぐ内面的な気付きに収斂させていくので、
まとまっているだけに、ちょっと強引?と思ったりもしたんだけど
やはりすごく温かい気持ちに…。
そこが彼女の力量で、好きにならずにいられないところなのだと思う。
たとえば森博嗣も好きだけど、彼の小説に比べると作為的なセリフ
(彼はそうでないことを目指しているので、特に遠い)
も多いんだけど、それはそれで、テンポよく楽しい。
難解ではない、でも複雑な事をちゃんと描けるだけの平易過ぎない、
言葉選びと運びが最の高。

T大理学部のひと(生物ではないが)と
まだ結婚する前に一緒に住み始めた頃、
大雪でエレベータが動かなくて、非常階段でごみを捨てに行った彼に
仕事前の私がすれ違ったら上の空で「おはようございます」と言われ
おはようございますじゃないんだよ
となった思い出がよみがった。
いや彼は自分で言っているんだけど、もっと研究対象以外の
俗っぽい(?)こといっぱい考えているタイプだけど、
集中すると本当に周囲見えなくなるんだよな、あの人ら…
でもそれは学問に限らず、何かに夢中な人はみんなそうなんだよね。
あるいは、人生の中で何かに夢中な時、人は誰でも。

脇役もよい意味で脇じゃなくて
それぞれに三浦しをんなら魅力的に描き出しうる、
素晴らしい人生があるんだろうなって感じる。
先輩とか、大将とか。
いまを生きる、いつも人間賛歌、
強い作家、私も強くあろうと思わせてくれる人。

力のある物語は、先が予想できるからといって面白さが損なわれない。
正直さ、小説慣れしてたらシナリオは読めるわけじゃないですか。
「教授が若い頃に、アウトドアで大事な人を亡くした」ってのは
顔色変えた時点でわかる。
わかるんだけど、それをああいう風にたどって
それは予想以上で、涙がぼろぼろになって、
しかも本村視点から離れた瞬間、
彼が語らなかった背景でトドメをさしてくるっていう…かなわん。サイコー。


研究も創作も、当事者は俯瞰してはダメで、近視眼的になる必要がある。
編集者の視点は余分(なのに私はそこが強すぎる)で、
とはいえ二次創作は切り替えたうえでやらなきゃいけないのかも、
まあ、どちらも職業的な事でない以上、楽しければいいんだけどねえ。

2019/10/19

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